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夏目漱石 『こころ』
暗い。暗いよ、先生。
先生が親友を裏切った場面に、もし俺が出くわしたとしたら、ぶん殴ってやるところだけど、でも、それでも次の瞬間には赦してやるさ。
罪を犯してしまった自分自身を決して赦さない態度はいいけど、それが反省になってしまっては何にもならんと思うよ。俺だって、きっとある部分では先生だし、これまでだって、これからだって過ちを犯すだろう。けど、それを悔やんで反省しても仕方がないよな。
できることは決まっている。人を殺めてしまった罪、その棘を心に、決して忘れることなく、繰り返し繰り返し確かめて、生きる。決して他人には告げることなく、生きる。そして、墓場に。
裏切ってしまったことを親友らに打ち明けられなかった青年期の先生は、すでに晩年にはいなかったのだと俺は思う。晩年にまで先生が周囲の誰にもそのことを秘していたことには、明確に強い「意思」が働いていたのではないだろうか。言えなかったのではない。言わなかったのだ。
決して軽々しく他言してならないこと。僕らの誰が、それほどのことを胸に秘めて日々を生きているだろうか。
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投稿者 Kazu : 2006年11月28日 17:43

